今日は飲む。
飼っていた猫が死んだ、と、人づてに聞いた。
二匹いるうちの上のほうだ。
それ以外は何もわからない。
彼は、僕らが結婚して1年目か2年目に、相方が拾ってきた。
皮膚が弱くて、しょっちゅう何かしらの皮膚病を患っている。
僕に似ている。
相方が拾ってきた日のことは、よく覚えている。
夕方に電話が掛かってきて、子猫を拾ったと。
動物病院で診てもらい、食欲はあるから何とか生き延びれそうだと。
でも、マンションはペット禁止だ。
どうしたらいいか、相方が言葉を飲み込んでいるのがわかる。
「飼おう。トイレ、エサ買って帰る。」
仕事を切り上げ、会社の近所のペット屋で、
子猫サイズのトイレ、砂、子猫用エサを買って、電車に飛び乗った。
通勤時間帯。当時は大阪を抜けて神戸に帰っていた。
他の乗客からすれば、ネコトイレを持った大荷物の男など、いい迷惑だろうが、気にしてられない。
毎日、生きているかドキドキしながら世話をして、
毎週のように病院に通い、日に日に元気になった。
それはいいが、高いところに登れるようになって、
頭の上から落ちてきたり、居心地が良くなったのか、他人の布団で先に寝ていたり、
食欲旺盛で、タヌキのように大きくなったり。
煮干しが好きだったなあ。いちおう体に気遣って、無塩煮干しにしてたけど。
相方と喧嘩した時には、いいタイミングで間に入ってきた。
子はかすがいとは、昔の人はよく言ったものだと、妙に納得させてくれたのも彼だった。
事情があって、僕は家を出た。
家を出るときには、そういうことも覚悟していたけど、
いざ現実になると、自分の人生を支えてきた土台が、
砂のようにもろい土台が、サラサラと崩れていくように感じる。
彼の死に目には会えなかった。
いつが命日なのか。
腎臓がだんだん悪くなっていたのだが、それが原因だろうか。
相方と子供たちは、彼を看取ったのだろうか。
だどしたら、子供たちは動揺しているんではないだろうか。
いろんなことが頭の中でぐるぐる駆け巡るが、どうやっても、彼ともう会えない事実は変わらない。
事故で子供を亡くした親の気持ちが、少しわかったなどと言ったら、おこがましいだろうか。
こんなことになる前、
ふと懐かしくなって、あの煮干し、買ってたんだよね。
体を撫でると静電気が起きるから、ポンポン叩いたり、
夏バテするからバリカンしたり、
興奮させすぎて嚙まれたり。
そういうことも二度とないんだよな。もう。
ちょっと、気持ちが重くて支えられなくなってきた。
煮干しをアテに、飲もう。
また会える日まで、元気でな。
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- 2016/11/08(火) 17:46:08|
- うちのネコ
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